ストレートネックと噛み合わせ

首だけの問題ではない

 まず、ストレートネックの概念ですが、文字通りレントゲン画像の側面像で「首が直線的になっている」という現象です。では、何と比べてまっすぐなのか?というが最も重要な部分なのですが、現在の一般的な考え方として「自然湾曲(図1.)が減少、もしくは消失している状態」を指します。しかしながら、元の自然湾曲というのは、そもそもが人それぞれの骨格によって差があるため、本来は画像でのみ判断できるものではありません。更に言えば、レントゲン画像は静止状態の記録であって、動的記録ではありません。つまり、撮影時の姿勢によっても大きく状態が変化してしまうものです。

図1. 自然湾曲が減少する

どうしてストレートネックになるのか?

姿勢の問題

 これは一般的に言われている問題ですが、ストレートネックの姿勢は、やはりスマホやPC、デスクワークの時の恰好が首が伸びた状態です。これがスマホ首と呼ばれる所以ですが、長期的にこの姿勢をすると、人間は環境適応型に生物であることから、首がストレートになった状態で筋肉が衰退、及び発達し、それらの恰好が楽になってしまうものです。

視力の問題

 視力の悪さも一つの要因になります。視力が悪い常態でPCやスマホ、デスクワークを行うと、長時間となると、目視対象物に対して最も見やすい姿勢をとります。この姿勢は、画面やモニターに顔が(目が)近付いた恰好にあり首が伸びてしまいます。ことから、結果的に見ずらい環境での仕事はストレートネックの要因を作ります。試しにやってみると分かりますが、PCのモニターの文字をわざと小さくして作業をすると、いくら注意をしていても前傾姿勢になってしまいます。

噛み合わせの問題

 意外なところですが、噛み合わせが乱れると、顔を頷かせた恰好になります。その理由は、噛み合わせを行う筋肉(咀嚼筋)が、最も楽をして顎を開閉できる恰好が「顎を引いた状態」だからです(詳しくは噛み合わせと顎関節症のページで)。ちなみに、顎が最大咬合力(力が安定して入る)姿勢は、それとは反対に、顎を上側に持ち上げた顔面の位置です。顎を引いた状態は省エネ活動である一方で、顎を上側に持ち上げた状態では、咀嚼活動に首周囲の筋肉が協調することから、労力が多くなります。顎に異常がある場合、この労力を払えなくなるため、より楽な顎を引いた状態での咀嚼運動をする様になります。

ストレートネックは呼吸器系に負担が掛かる

  ストレートネックという名前から、首ばかりがフォーカスされますが、首は背骨の中でも一番小さな骨であり、問題はその土台にあります。頚椎の土台は、上部の胸椎にあり、丁度肩のラインの付け根部分です。頚椎と胸椎の解剖学的な差は胸椎は肋骨と関節を有しており、頚椎よりも多くの構造的歪曲をもたらします。このことから、土台が正常位置にないからこそ、上に乗る頚椎が異常位置にあるわけです。
 また上部の胸椎は、心臓や肺、気管支などの呼吸器系の神経(交感神経)が連絡しており、ここの筋肉の慢性緊張は、これらの臓器の働きの異常を誘発させます。背骨の歪みと筋緊張が疾患と関連することは、こちらのページでご紹介しておりますが、米国医師会や米ジョンズ・ホプキンス大学でも学術的な裏付けが発表されています。

ストレートネックにならない姿勢とは

姿勢を正し過ぎてもダメ

 では、どんな姿勢を心がける必要がるのかといえば、背中が丸まらない姿勢が良いのです。しかし、実際には背中の背骨部分(胸椎と呼びます)は、首とは全く逆の、後側への自然湾曲を持っており、首が前に湾曲しているS字構造です(図2,)。よって、背中を真っすぐにすると、、首の前方湾曲は再現できますが、今度は背中の胸椎は自然の後方湾曲が減少してしまいます。背中が前方へ伸びてしまうことで起こる障害は、左右の肩甲骨中間部分のコリや痛みです。また、首を左右に動かすことで、背中の方まで痛みを感じる「寝違え」も、胸椎の前方湾曲が原因です。
 ですから、ストレートネックの姿勢を正そうと頑張れば頑張る程、実際には胸椎へ負担が掛かってしまい、傷めてしまうという逆効果もあるのです。このことから、ネット情報などを簡単に鵜呑みにしてしまうと、他の部分を傷めてしまう悪影響もあるのです。これは昨今のネット情報が溢れてしまったことにも原因があり、実に根深い社会問題といっても良いでしょう。


図2.背骨の自然湾曲

答えは視線

 既に、ストレートネックの原因に答えは存在します。姿勢は何かを「見る」時に、全身がその注視ポイントに合わせます。そして、長時間になればなる程、その位置に対して楽な状態を維持しようとします。
 では、首が伸びない(ストレートにならない)視線というのはどういうものでしょうか?PC作業をするにもスマホを見るにも、結局は顔が下にうつむくように、対象物が解剖学的な目線よりも下にあるからなってしまうのです。であれば、逆に、視線を並行かそれよりも上に持って行く時間を作ってあげると良いのです。例えば、斜め45度上にある対象物を見るようにするなど、工夫をすれば視線は上を向きます。
 また、図2. にあるように、首の自然湾曲は前方側にありますが、この前方への湾曲は、実は腰の前方湾曲とでバランスされています。従って、ストレートネックにとって良い姿勢とは、首ではなく、むしろ腰の前の湾曲形成です。特に猫背は、背中が丸まっているというよりも、腰が丸まっているから相対的に猫背になるのです。

それでも解決しない原因

 日常の生活を癖を改善させても治らないストレートネックがあります。それは、頚椎の土台でもある胸椎に強固な緊張や、背骨のズレを持っている場合です。また、先述したように、顎関節の異常も手助けが必要になります。
 これらについては、我々の整体によっても改善が可能ですので、一度ご相談を頂ければ幸いです。