脊柱付近の温度差/GEN流院

体温とは

 体の温度を「体温」と呼びます。昨今、コロナ禍で体温計測が頻繁に行われるようになりました。「体温を計測して下さい」と言われた場合、殆どは腋窩(わき)に体温計を差し込んで行います。通常の電子体温計ですと、おおよそ30秒程度で体温計測が可能です。しかし、これは体温の「予測温度」であって、正しい「実測温度」は、10分程度の継続的計測が必要です。
 また、体温とは違い、体の表面の温度を測るという意味においては、これ程の時間を要しません。おでこや手首で手軽に「ピッ」とするだけで、1秒以下の時間で計測ができます。これは熱を持つ物体から発する赤外線を読み取ることで温度を測る非接触の仕組みです。
 この様に、体温とはいっても、厳密には部位や計測方法によって全く異なるものであり、どこの体温をどの部位で計測したのかという、重要な部分が抜け落ちています。

からだの体温調節の仕組み

 体温は正常であれば、通常は36℃前後にあります。近年の日本人は体温が低くなっているという統計もあり、例えば1957年に東京帝国大学の田坂教授らのグループが調べた統計によれば(体温の研究)、当時の日本人の平熱は36.9℃であったとのことです。体の熱は基礎代謝によるものが殆どであるため、現代人は基礎代謝が減少しているのかも知れません。
 人間の体の場合、服などの保温がない状態では、20℃以下の環境温度に長時間さらされると、筋肉の緊張によって(震えて)熱を生産し始めます。一方、30℃以上の環境になると、今度は発汗によって熱を放散させて一定の環境を保とうとする「本能的」な働きがあります(恒温動物)。昨今、電力消費削減問題にちなんで、エアコンの快適温度設定というものを示しているところがあります。人間はそれぞれで体温が違うものですから、厳密には全ての人間にとっての快適温度は難しいわけですが、このことから、20℃と30℃の中間というのが一般的と言えるでしょう。
 では、筋肉による強制的な熱生産も起こっていない、そして発汗などの熱放散も生じていない安静状態のときの体は、どのように体温を一定に保っているのでしょう。これは、皮膚血流量によって決定されているのです。体表の血管は、自由自在に血管を広げたり縮めたりができます。これにより、体温の微調節を行なっています。正常であれば、この働きは体の左右で全く同じ温度になるように管理されています

 

左右に等しく体温管理しているのは、交感神経という神経によるものです。交感神経は体温管理の他、内臓の動きをコントロールする仕事をしています。

交感神経を見える化する

 交感神経は自律神経の一つであり、体を自動的に管理してくれている「生命維持機能」です。健康な体であれば、常に一定の働きを行なってくれます。ですが不健康な状態に陥ると働きに乱れが生じます(生体恒常性が乱れている)。先に述べたように、体温の乱れや内臓の乱れがそれにあたりますが、これまでこの働きをなかなか見える形で知ることができませんでした。そこで当院では、これまであった赤外性計測を応用し、より精度が高い形で体温調節機能を見える化することに成功しました(特許取得)。これにより、体の機能状態をより正確に知ることが可能となりました。

温度を測って内臓の機能状態がわかる?

 体温とはいっても、どこを計測するのかで全く温度が異なります。例えば、内臓など体の深部では通常38℃程度、体の皮膚表面では36℃になります。この「どこを測るか」というのが重要な部分になります。そのためには、まずは交感神経の走行をご説明してゆきます。
 交感神経は下の図1.のように、背骨の柱に沿って走行しています。意味もなく背骨に沿って走行しているわけではありません。これは背骨の内部を走行する脊髄との連絡を持っているからなのです(図2.)。そしてこの神経は、背骨を中心とした左右に存在します。よって、計測部位は背骨の直ぐ両側の皮膚が最良の部位となります。

 

図1.交感神経と脊髄と背骨の関係

内臓をコントロールする交感神経と脊髄は連絡を持っている

図2.体表の温度管理の領域

背骨を中心に左右で神経が区分されている

 

当院開発の計測器画像

 背骨を中心とする左右の温度を比較する当院特許の計測画像です。首の方から骨盤付近まで計測し、どこの部分が最も温度差があるかで評価します。整体で施術をする部位もこの温度差に伴って決定するため、直感的、かつ科学的見地から施術を行うことが出来ます。
 また、この計測は、体の生体恒常性を知ることができるため、整体やカイロプラクティックは勿論、鍼灸やマッサージなどを含む代替医療にも幅広く活用することができます。将来的には、計測を行うことで病気に至る前の段階において、恒常性を取り戻せるようにするのが目標です。

 

各背骨の温度差と内臓の関連性

交感神経は脊髄と協調して大きく3つの神経ルートを持っています。
1、内臓をコントロールする神経
2、内臓から筋肉へ
3、内臓から皮膚へ

 下の動画でご紹介しておりますが、大まかに、頚椎は副鼻腔や咽頭、上部の胸椎は気管支や肺、心臓、中部の胸椎は胃、肝臓、胆のう、下部の胸椎は膵臓、脾臓、十二指腸、上部の腰椎は小腸、中部の腰椎は子宮、下部の腰椎は膀胱、直腸、卵巣、前立腺が神経分布として関連性があると予測されます。

 

正確性の探求

 赤外線で体の状態を計測することは、医療業界でも随分昔から実験が行われてきました。しかしながら、根本的な部分に問題がありました。その問題とは「現存の赤外線計測方法では正確な温度が測れていない」ということです。赤外線は、サーモパイルというチップから計測体まで非接触で計測を行います。当院の依頼によって第三者機関で行なった実験では、現存するサーモパイルチップ(医療用)では2つのチップが同一個体を計測して、同じ温度を示す割合が3%未満でした(0.01℃単位)。よって、おおまかな温度を比較するのであれば、これまでの仕組みでも可能ではありましたが、微細な温度比較を行う場合においては、現存の赤外線では無理がありました。そこで当院では、この温度を読み取るチップを1個以上の複数に増やし、計測誤差を薄める仕組みの構造にしました。これにより、より正確に交感神経の働きを読み取ることが可能となったわけです。