背骨は脊髄を保護しつつ、運動を可能とした重要な柱です。背骨は一本の柱状に見られることから、全体を「脊柱」と呼びます。脊柱の構成は上から、頚椎7個、胸椎12個、腰椎5個、そして骨盤の真ん中の仙椎5個(通常仙骨として1個で扱われる)、尾椎3~6個の構造体です(図1.)。
【図1. 脊柱の側面像】
それぞれの背骨の間から、左右へ神経が通過しています。この神経は脊髄から分岐したすぐの神経で、背骨部分は全身と中枢との分岐点になります。よって、背骨の複雑な構造は、脊髄を保護する役割がある結果です。骨は発生学的に神経よりも後から形成される習性があることから、骨は神経走行を沿って出来上がったものです(図2.)。
【図2. 背骨を上から見た断面】
腰椎は背骨の中でも大きく厚みがあり、シッカリとした形状をしています。これは、体重を支える上で、頭から上半身までの重さを支えるための構造です。そのため、他の背骨よりも負担が掛かりますから、結果的にトラブルは多く見られます。
背骨と背骨の間には、椎間板という繊維輪状の軟骨があります。この椎間板の真ん中には、髄核と呼ばれるゲル状の衝撃吸収を担う物質が入っています。椎間板の内部が破壊され、このゲル状のものが外に飛び出ようとして炎症を起こすのが「椎間板ヘルニア」と呼ばれるものです。背骨は神経に沿って出来上がっているため、背骨の間の椎間板に炎症が起こると、脊髄から出た神経にぶつかる現象が起こります。精工に出来上がっているため、本来の形状から逸脱すると、神経が圧迫されてしまうのです(図3.)。
腰椎から出る神経は、下半身へ向かう神経です。このため、腰椎で起こった異常は、下半身へと症状が及びます。足の感覚異常や、臀部の痛み、筋力弱化など、いずれも神経が圧迫されることで起こる症状です。
【図3. 椎間板ヘルニア】
また、椎間板ヘルニアの症状があるかたは、腰部の神経は下肢の後面を通過していることから、これを引き延ばす動きをすると、症状が顕著に増加します。整形外科テストとよばれるもので、足を伸ばした状態で挙上させ、意図的に症状を誘発させる検査もあります(図4.)。酷い場合には、殆ど足を上げられない人もおり、ハッキリとした症状があるかたは、一度精密な画像診断を病院で受けられることをお勧めします(レントゲンでは正確には映りません)。中には、神経圧迫が椎間板ヘルニア以外の場合もあります。
個人的には、生活や仕事に相当な支障を来す場合や、排尿障害(神経圧迫が酷くなると排尿が困難になる)がある場合を除き、外科的な処置の決断は、早まらない方が良いでしょう。結構は割合で、将来的に神経症状を再発される方を多く見ています。
【図5. 足の挙上検査】