痺れが伴う腰痛について/六本木整体GEN流院

下肢に痺れや痛みがある腰痛

 足の痺れや感覚異常を感じる腰痛のかたは、比較的重度なケースがありますので、可能な限り整形外科などで医師の診断を受けられることをお勧めします。その上で、急を要することがなければ、整体でも対応は可能です。

痺れのある腰痛の特徴

 下肢に痺れや感覚異常を伴う場合、どこかで神経が圧迫されている事のサインです。また、血流不全でも同じ症状は出ますが、神経は一定のエリアで区分して支配されているため、比較的症状の部分が限定されています(図1.)。一方で、血流による異常の場合は、部分というよりも全体的で範囲が広い傾向にあります。ここでは、腰が原因で起こりやすい痺れについて扱って行きます。

【図1. 神経支配領域】

神経が圧迫を受けやすい部位

 座骨神経痛とほぼ同じ内容になりますが、下肢への痺れは神経走行からいって、腰椎付近での圧迫が最も多くなります。他には、梨状筋という臀部の筋肉によって神経圧迫が起こることもあります。梨状筋は、座骨神経と距離が近く、また奇形も多いため、人によっては梨状筋の間を貫いて座骨神経が走行しているというケースもあります。座骨神経痛のページを併せてご覧ください。

よくある腰部の問題
椎間板ヘルニア

 最も疑いがあるのは椎間板ヘルニアです。腰椎部の神経が椎間板の腫れや突出によって当たってしまい、これが下肢にしびれを来します。軽度の段階から、神経圧迫部から体全体が避けるような姿勢を取るのが特徴です。これを逃避姿勢と呼びます。ほぼ無意識的な反応で出るため、後から観察をするとよくわかります(図2.)。椎間板ヘルニアで主に多いタイプは、後方の左右どちらかへの椎間板突出で、これは靭帯の構造上最も手薄な部分に多く飛び出る習性があるからです。広義で脊柱管狭窄症に括られることもありますが、実は後にご紹介します、加齢性の脊柱管狭窄となかなか区別が付かないことがあります。

【図2. 逃避姿勢】

腰椎分離すべり症

 腰椎そのものが分離して、不安定な状態にある現象が腰椎分離症です。実は私も腰椎分離症を持っており、高校生の時に座骨神経痛の発症により発覚しました。子供の背骨は、おおよそ軟骨状態であり、成長過程で骨化が進みます。この途中段階で、激しい運動を行ったりすることで、骨が一体に骨化せず、分離状態になってしまうことがあります。全く無症状の方もおりますし、酷い方はこの分離した事が原因で、腰椎が動いてしまい、これが神経に触れて、下肢への痺れとなることがあります。これを腰椎すべり症と言います。椎間板ヘルニアとは触診でも見分けが付きます。すべり症の方は、腰椎の全体のカーブがなだらかですが、分離して滑っている骨だけ急激に後方に突出し、明らかに目立つ状態にあります。
 表現のしかたにもよりますが、現象だけ見れば骨折という印象を受けますが、成長過程によるもので、骨折の様にくっつくことはありません。このことから、親御さんが悩まれるケースが多くありますが、私の実体験では、高校生以降で腰痛になったことも座骨神経痛になったこともありませんし、分離があってもすべり症がなければ殆ど問題は起こりません。原因は激しい運動と記しましたが、おおよそ椎間板ヘルニアも腰椎分離も大腰筋の緊張及び委縮が原因です。

【図3. 腰椎が分離して滑る】

脊柱管狭窄症

 脊柱管とは、背骨の真ん中にある隙間であって、脊髄が走行している部分です。本来は、背骨が作るこの菅には十分なスペースがありますが、何かの原因で脊柱管内にスペースが無くなり、脊髄付近で圧迫やこすれが起こることで発症します。よって、椎間板ヘルニアも腰椎すべり症も、広義では脊柱管狭窄症と呼ぶことができます。主に、加齢による背骨の変形や靭帯の骨化によって脊柱管が狭まるケースが多い様です。脊柱管は、首から腰まで一本の菅ですので、腰以外でも起こります。ちなみに、頸部でこれが起こると、手や腕に痺れや痛みが発症します。
 病院では、積極的な治療となると、外科的な方法を提案されます。ただ、軽度であれば、当方の整体でも結果的に改善に向かった人は数多くおります。たいていの医師は「神経に当たっているものを削らない限り治らない。整体なんかでは無理だ」という全否定の意見をいわれる方が多いですが、これは全くの誤解です。整体では、神経が当たっている部位など毛頭興味はございません。背骨及び脊柱管は、全体でS字カーブを描いています。脊柱管狭窄症をお持ちの方の多くは、背骨のS字(脊柱管のS字)が減少している状態の方が多く、整体ではこれを正常なS字湾曲にするだけです。物理の単純な話でして、脊髄は硬膜を介して頚椎1~2番の内面と、仙骨及び尾骨に強固に付着しています。つまり、S字が減少すると、頚椎から仙骨までの距離が引き延ばされるのです。引き延ばされた脊髄は、ちょっとして圧迫によっても過剰に反応します。単に、正常なS字に戻してやれば、脊柱管内にゆとりが出来上がり、圧迫応力が減少するというだけの事です。ですから、整体は一貫して全体論であって、西洋医学は局部対処論なので、全く異視点が異なるものなのです。

【図4. 脊柱の湾曲側面図】

何が原因で腰を壊すのか?

 慢性腰痛の延長線上にあると思われがちな神経症状ですが、致命的な破壊が起こっているか起こっていないかの差でもあります。例えば、腰椎分離すべり症ですと、激しい運動を行っても、本来の体はそこまで脆弱に出来ていません。ですから、正常な体の状態であれば破壊までに至らないのです。では何がそこまで状態を進行させてしまうのか?と言えば、重力に対して不自然な応力処理をする体になっているのが問題なのです。
 慢性腰痛のところでもご説明しましたが、基本的に立っているだけでも体重が骨に掛かります。これが、運動をしたと仮定すると、更に地面からの突き上げる力が何倍も増えます。その時に、体の各関節に十分なあそびがあったならば、この力は骨の形成段階でしっかり適応できるものになっています。実際の骨断面を見ればわかりますが、おおよそ力の加わる方向に骨繊維は形成されます(下の写真)。ドイツの解剖学者でもある、ジュリアス・ウォルフも、骨は加わる力に沿って形成され、それは正常な状態でも異常な状態でもその環境に合わせると述べています。

 

 つまり、環境に合わせた方向以外から力が加わるから破壊が生じるのです。その最も多い原因が大腰筋の委縮です。下記は実際に破壊的な所にまで至った方の正面画像です。大腰筋の委縮によって、骨繊維の方向と違う角度から、自重および運動などによる、地面からの突き上げで外力が侵入した結果です。関節にあそびがあれば、その柔軟性で侵入方向を修正します。ところが、関節にズレが起こると、関節の方向に可動制限が起こります。この可動制限の厄介な所は、一方向からの関節のあそびが消失することです。

【図5. 右大腰筋の委縮と肥厚ひよる腰椎の傾き】

まとめ

 我々の整体は、腰痛に対しては直接的に介入しません。痛い所に痛み止めを処方したり、注射をしたりするのが直接的な介入であり、それは医師の仕事です。では整体で何を行うのかというと、例えば大腰筋の様な異常な委縮をしたものを見つけ出し、それを正してゆくことを行います。結果的に、骨本来が持つ、外力適応された繊維方向の位置に骨格が戻り、余計な破壊的負担のリスクを減らすだけです(骨のズレを放置しておくと病気になる?)。
 筋肉の場合、緩める方法は2つのパターンがあります。極めてソフトにストレッチするか、全くそれとは反対に、筋肉の付着部分同士を極限まで近付けて脱力して待つかです。これらの方法は神経学的な裏付けを基に昨今ではシッカリとした技術体系がなされております。更に深く知りたい場合は、こちらのサイトでご紹介しています。
 この様に、腰痛は本来環境適応された骨の繊維方向から逸脱しているというサインでもあります。これを解消するために、我々は整体の手法を用いて施術を行っています。